自ら首を絞める大企業のリスク
こんばんは、経営理念コンサルタントでリスクマネジメント協会 Certified Risk Manager のアキバです。今日も暑い一日となりました。
こう暑いと、電車のエアコンもフル回転となり、寒がりな方々には厳しい冷え込みとなりますよね。
冷え込みと言えば、日本経済の原動力と言われる製造業ですね。
一般的なニュースでは、大手メーカーの業績回復が話題となっておりますが、その大手メーカーの利益を生み出している下請け、孫請けメーカーは本当に大変なんです。
大手メーカーは利益を生み出すために、下請け企業に毎年のように値下げ要求をして来ます。
同じ型の部品でも、毎年のように値下げ要求をして来ます。
大手メーカーが利益を上げるために厳しく行っている原価管理は、3つの原則から成り立っています。
原価維持
原価改善
原価企画
まずは、原価の企画です。
仮説をもって原価シミュレーションを重ね、設計に入る前段階で完全に利益が見えるようにして、設計開始後は原材料の世界的な高騰といった外部要因に対応するというものです。
この段階で、下請け企業に要求する部品単価は決められます。
次に、原価の維持です。
仮説をもってデザインした原価シミュレーション通りに原価管理をします。
とはいえ、原材料の世界的な高騰や、突発的な事故による部品供給量の減少が発生すれば、下請け企業は値上げ依頼せざるを得ないでしょう。
そこで泣きを見るのは、勿論、下請け企業です。
『顧客満足度の向上』『顧客志向』の名の下に、値上げをすれば売れなくなると、大義名分を振りかざして年度計画通りの原価を維持しようとします。
勿論、表向きは『取引先関係企業の協力・協業』という形ですから、下請け企業は泣きを見ているのではなく、あくまでも一丸となって『顧客満足度の向上』『顧客志向』を実践している事になります。
最後に、原価の改善です。
大手メーカーにおいては、大量生産による単価の低減と、リコール発生頻度の低下を目論んで、複数モデルにおける部品の共有化が進められました。
大きな欠陥が見つかった場合は別ですが、いくつかのモデルで品質が検証されている部品を他のモデルにも流用する事は、流用したモデルのリコールリスクを減少させます。
この結果、モデルチェンジがあっても必要な新しい部品点数が少なくなりました。
さらに複数モデルで共通化した部品の原価を改善する事は、すなわち複数モデルの粗利を増やす事に繋がります。
この事が表面的にもたらす影響は、大手メーカーの原価・利益マネジメントによる体質改善です。
しかし、その裏側では、
・新しい部品点数の減少による金型需要の低下
・共有化した同じ型の部品の毎年度毎の原価改善要請による下請け企業の利益の減少
・共有化した同じ型の部品をさらに安く仕入れるための海外調達化
・海外調達でも品質を保ち、数量も安定供給するための日本人技術者の海外流出
etc......
によって、日本の金型産業の衰退と儲からない下請け企業の増加が起こっているのです。
表面的には
企画→維持→改善
ですが
事実上
企画→イジメ→改善
と感じていらっしゃる下請け企業様も多いのではないでしょうか。
数では9割以上を占める中小零細企業。
そこで働く方々は、人口でも間違いなく多いですよね。
そんな中小零細企業が儲からないという事は、すなわち《 需要 》が減少するという事です。
国内需要は、中小零細企業の経営悪化と共に落ち込みます。
さらに、海外に求めた部品供給も、中国の人件費高騰や品質の問題で、この先どこへ向かうのか微妙な状況になって参りました。
しかし、力のあった下請け企業も、海外流出の波をモロに受けてしまい、倒産や清算を余儀なくされ、跡形も無くなってしまった企業まで出てきているのが現実です。
このままでは、もう一度、部品の国内調達にシフトし直そうとしても、国内製造業の空洞化によって、
「遅かりし後の祭り」
っとなってしまう可能性が高まっているのです。
信頼して部品供給をお願い出来るビジネスパートナーが不在となるリスクと、国内需要の減少リスク。
一方で原価・利益マネジメントによる体質改善を進めながら、もっと大きなリスクを膨らましているかも知れない大企業。
政治だけではなく、経済においても、日本全体のバランスを考えてマスコミの報道を捉えていきたいですね。
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